不動産相続で支払う税金について。注意点も解説
不動産を相続した際、税金がかかることを知っている方は多いのではないでしょうか。しかし単純に「相続税がかかる」という認識は不正解です。実は相続税の他にも税金がかかるのです。今回は不動産相続で支払う税金について、その内容と相続税の計算方法、注意点、そして節税方法について解説していきます。
不動産の相続時に払う税金は2種類
不動産を相続した時に払う税金は実は2種類あります。「相続税」と「登録免許税」の2種類となります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
■ 相続税
相続税は親などが死亡したときに財産を相続した人に課税される税金です。相続した財産が一定額を超えた場合は、超えた部分の財産に対して課税されます。相続税の申告は、死亡した人(被相続人)が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内が期限です。
■ 登録免許税
住宅を相続するときには、土地や建物に買った人の所有権を登記します。これは法務局(登記所)にある登記簿に土地や建物の所有権を記録して公示するための手続きです。つまり、「この相続した不動産は私が所有しているものです」ということを対外的に示すということです。
登録免許税とは、この登記手続きの際に国に納める税金のことです。税額は土地や建物の評価額(固定資産税評価額)に税率をかけて計算します。
相続税の計算方法
相続税の計算は非常に煩雑ですが、詳しく解説していきます。
■ 税金のかからない範囲
正味の遺産額が「基礎控除額」以下の場合には、相続税はかかりません。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算することができます。
例:法定相続人が妻と子ども2人の場合の基礎控除額
3,000万+600万×2人=4,200万円
また、生命保険金や死亡退職金は、それぞれ
非課税限度額(500万円×法定相続人の数)までは相続税はかかりません。
■ 相続税の税額計算
相続税の税額計算には以下の速算表を使うと便利です。速算表とは、超過累進課税である相続税を簡単に計算するための税率表です。現在(平成27年以降)の相続税の速算表をご紹介して、速算表を使った相続税の計算方法を解説します。
【速算表】
・課税価格1,000万円以下の場合
税率:10% 控除額:なし
・課税価格3,000万円以下の場合
税率:15% 控除額:50万円
・課税価格5,000万円以下の場合
税率:20% 控除額:200万円
・課税価格1億円以下の場合
税率:30% 控除額:700万円
・課税価格2億円以下の場合
税率:40% 控除額:1,700万円
・課税価格3億円以下の場合
税率:45% 控除額:2,700万円
・課税価格6億円以下の場合
税率:50% 控除額:4,200万円
・課税価格6億円超の場合
税率:55% 控除額:7,200万円
先ほどの、法定相続人が妻と子ども1人の場合で考えてみましょう。故人の遺産総額が1億4,200万円だった場合、課税遺産総額は以下となります。
1億4,200万円-4,200万円(基礎控除額:3,000万円+600万円×2)=1億円(課税遺産総額)
課税遺産総額を一旦、法定相続分で分割したものと想定して相続税の総額を計算します。
妻:1億円×1/2=5,000万円
子:1億円×1/2=5,000万円
速算表で相続税額を計算すると以下の通りになります。
妻:5,000万円×20%(税率)-200万円(控除額)=800万円(※)
子:5,000万円×20%(税率)-200万円(控除額)=800万円
※妻については配偶者の税額軽減でこのケースでは実際は0万円となります。
相続税の注意点
相続税を申告する際の注意点を確認しておきましょう。
■ 土地を相続する場合
土地を相続する場合は、その価値を金額換算しなければなりません。土地の評価は例年7月に国税庁から公表される『路線価』を参考にします。しかし、7月より前に相続した場合は、前年分の路線価を参考にしましょう。
相続税を下げることは可能?
■ 生前贈与で相続財産を減らす
生前贈与とは生存している個人から別の個人に財産を無償で渡すことです。亡くなる前に生前贈与を行うことで、相続税の課税対象となる財産を減らすことができます。
たとえば、財産を1億円持っている状態で亡くなってしまうと1億円に対して相続税が課税されます。しかし、亡くなる前に3千万円を人に渡しておけば財産が7千万円になりますので、7千万円に対して相続税が課税されます。3千万を生前贈与することで相続税の課税対象となる財産を3千万円減らすことができます。
■ 生命保険金等の非課税枠を利用する
生命保険金には相続税の非課税枠があります。生命保険金の金額から【500万円×法定相続人の数】を差し引いて相続税を計算することが可能です。
たとえば、法定相続人が2人の場合、生命保険金等の非課税枠は500万円×2人で1,000万円です。生命保険金が5,000万円であれば5,000万円-1,000万円で4,000万円に対して相続税が課税されます。生命保険金が500万円であれば生命保険金の非課税枠の金額以下ですので相続税が課税されません。
今回は不動産相続で支払う税金について、その内容と相続税の計算方法、注意点、そして節税方法について解説していきました。「相続なんて先の話だし、よくわからない」と思っていた方も実際の相続対策をしてみるきっかけになっていただければ幸いです。話題にはしづらい内容ですが、生前から家族とよく話しあっておくことも大切ですよ。